ピアノ一筋の僕はどんな本を読めばいい?

文学経験値0の大学生が空っぽの本棚を埋めていく

クリストファー・ノーラン『TENET』を鑑賞する

Tenet (2020) - IMDb

 

クリストファー・ノーラン最新作、むちゃくちゃ面白かったです!!

 

TENET テネット(字幕版)

TENET テネット(字幕版)

  • 発売日: 2020/12/16
  • メディア: Prime Video
 

現在と未来からの逆行が入り混じる、今までにない超大作SF映画

今までのノーラン作品の中で一番難解と言われていた今作ですが、「時間の逆行」を駆使した伏線を意識していれば、一回目でも何となく理解できます!

でも、2回観ることは必須だと思います。絶対楽しめる。

 

逆再生の映像と普通に歩いている映像とが合わさっていて、どうやって撮っているんだ?と視覚的にも楽しめます。

さすがにそういった部分はCGでしょうが、この作品は公開前から「CGを使わず、リアルで飛行機を建物にぶっこんでる」と話題になっていたと記憶しています。

 

この映画、主人公も良いですが、相棒となる ニール がまた美味しいポジションなんです。

人類を消去しようとする未来からの脅威と戦う物語でもありながら、主人公とニールの時空を超えた友情の物語とも言えるのです。

 

これは素晴らしい友情の終わりだ

 ニールの最後の場面の言葉は、映画好きの兄曰く『カサブランカ』のオマージュらしいですよ。

 

これが俺たちの友情の始まりだな

坂口安吾『風と光と二十の私と』『私は海をだきしめていたい』を解読する

坂口安吾 - Wikipedia

先日、中学からの友人と神保町へ遊びに行ったとき、坂口安吾を薦められました。

名前と『堕落論』くらいは聞いたことがあるものの、全く未知な作家です。

友人は、受験勉強に疲れたときに読んでいたそうで、『風と光と二十の私と』を特に好んで読んだ作品だと言っていました。

 

受験期に良い本と出会えることは皆に当てはまるのでしょうか。

私はセンター試験予想問題に出題された、鈴木三重吉『千鳥』がずっと心に残っています。

いつか『千鳥』もご紹介できたらと思います。

エモいので是非読んでください。

 

 

さて、坂口安吾作品はありがたいことに「青空文庫」に多く収録されているので、今回は2冊読んでみました。

『風と光と二十の私と』と『私は海をだきしめていたい』です。

どちらもあっという間に読めてしまいますが、坂口安吾がどういう人物だったのかを垣間見ることができるでしょう。

 

『風と―』は自伝的短編小説で、二十歳までの自分と1年間教員として働いた小学校での思い出を回想するお話です。

『私は―』も短編小説で、何事にも満足ができない孤独な男と不感症だが身体を弄んでしまう女との肉欲に従順な生活が、アッサリとした不思議な調子で描かかれています。

 

おそらく、この2つの作品の主人公「私」は同一人物、つまり坂口安吾自身であり、前者は二十歳までの若い時(回想形式であるが)、後者は30代から40代の頃だと思われます。

 

今回は2作品の「私」を同一人物と見なし、それぞれの「私」の特徴や個性を分析しながら、共通点・相違点を紐解いていきましょう。

 

  • 少年期
  • 青年期
  • 壮年期
  • 2つの「私」の同じ部分、変わった部分
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吉田博という天才

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東京都美術館で開かれていた「吉田博展」へ行ってきました。

吉田博という名前は今回初めて聞いたのにもかかわらず、ハマってしまい図録も購入。

 

摺り重ねた美 「没後70年 吉田博展」東京都美術館で開催中 – 美術展ナビf:id:PianoMan0315:20210318203925p:plainf:id:PianoMan0315:20210318204314p:plain

きれいですよね、私が特に好きな3点です。

美しい色彩、奥行きを持つ陰影、力強さを感じる線描、これ版画なんです。

 

「うそだろお前、筆で描いてるんだろ?

素直に描いてるって言ってくれてもいいじゃない、十分すごいんだから。

え、版画?これ彫ってるんですか?え、なにこれやばい。」


頭の中でずっとこう言っていました。

細かい線を彫って作っているとか、淡い色の移り変わりとか、とても版画とは思えない。

ただ浮世絵が進化したとか、ミュシャの風景画版とかそんなレベルではなかったです。

 

それまで水彩画や油彩画によって世界から認められていた彼は、40代で版画に着手しはじめます。

水彩、油彩で培った絵画の技法、版画特有の表現を駆使し、死ぬまでに250点以上の版画を作成しています。1926年には1年間で41点も作成!

「早描きの天才」との異名は版画でも発揮していたのか。

 

日本の風景以外に外国の山や建築物なども描いています。

彼は、若い頃にアメリカで成功したのをきっかけに数多くの旅行を繰り返していました。

アメリカ、ヨーロッパ、エジプト、インド、東南アジア、中国、etc...

滞在先で数多くのスケッチを取り(この時点でむちゃくちゃ上手い)、多くのアイデアを温めていたことをうかがわせます。

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/513a3S%2BwOFL._AC_.jpg吉田博 – ベナレスのガット (近代風景画の巨匠 吉田博展-清新と叙情より) - 600dpi | パブリックドメイン美術館f:id:PianoMan0315:20210318223403p:plain

 異国情緒あふれる巧みな構成に、思わずため息が出てしまう。

これは、直接見に行かないと味わえない美しさでしょう。

 

ぜひ、一度足を運んでください。開催期間はあと1週間ほどなので。

『最新 ピアノ講座』を解読する

最初に申し上げますと、この本は全ピアノ演奏者必読です!

 

『最新 ピアノ講座』(音楽之友社)という書籍は、1970年代終わりから1980年代に出版された全8巻からなるものです。

最新と言うのにもう40年経つじゃないか!とはいえ、クラシック音楽は200年間で培われた代物なので、そこらへんは大丈夫(?)

1巻 ピアノとピアノ音楽
2巻 世界のピアノ教育とピアノ教本
3巻 ピアノ初歩指導の手引 Ⅰ

4巻 ピアノ初歩指導の手引 Ⅱ

5巻 ピアノ実技指導法

6巻 ピアノ技法のすべて

7巻 ピアノ名曲の演奏解釈 Ⅰ

8巻 ピアノ名曲の演奏解釈 Ⅱ

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上の図をよく見てください。名だたる日本の音楽家たち!クラシック音楽に少しでも興味ある方は、三好晃、中田喜直の名は聞いたことがあるでしょう。

他にも池内晋一郎、市田儀一郎園田高弘、安川加寿子など、ピアノ教本や編纂して頂いた楽譜にお世話になってますねー。

 

この書籍はピアノのあらゆる事に言及したものなので、日本のクラシック音楽界で非常に重要な地位を占めていると思います。

重要度は「芸大和声」と同じくらいでは?

 

今回は「ピアノ技法のすべて」という副題の第6巻をご紹介したいと思います。

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樫本大進、キリル・ゲルシュタインの素晴らしき演奏

サントリーホールで行われた樫本大進氏(Vn.)とキリル・ゲルシュタイン氏(Pf.)のデュオ・リサイタル。

先生に勧められてチケット買ったけど…

聴けて良かった!

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ゲルシュタインが思ってたより背が大きかった。樫本よりも頭一つ分ある大柄なのに、とても繊細な音の作りで驚き。

樫本は身体を反るような弾き方や右足を後ろへ引き体重をかけるなど、体全体でのダイナミックな演奏だった。

 

開幕はプロコフィエフ の《5つのメロディー》から。

高音から低音へ、軽やかさから重くうねるような旋律まで、様々なヴァイオリンの顔をまず見せてくれた。

こんなにもヴァイオリンは変化に富むのか。

思わず息を呑む。

 

続いてフランクの《ヴァイオリン・ソナタ イ長調》に入った瞬間、「これは今まで聴いたフランクの中で1番じゃないか」と思った。

ピアノのなんて繊細な響き。ほんの少しでも間違えれば鳴り損ないそうなその始まりは、静寂と音楽を繋ぎ止める一本の糸のようであった。

伴奏としてのピアノは、たとえ弱くてもしっかりとした発音で、よく喋っていた。

ヴァイオリンも夢見るような優しい歌いで、聴く者をうっとりさせる。

重々しく熱を帯びた第2楽章は、ある場面で樫本が一段と(カツンと)足を踏みしめ、弦を鳴り響かせる時があった。そこでさらに緊張感が増したと思う。

神秘的で優美な第3楽章を経て、穏やかな第4楽章。ヴァイオリンとピアノとのカノンが、たわいもない会話の様で心落ち着く。

 

休憩が入り、後半へ。

武満徹の《妖精の距離》は、浮遊感やどこか非現実的な響きを持っていて、まさに妖精や超自然的な距離を感じ取らせる。

 

最後はベートーヴェン《ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」》。

意外にもあっさりとした出だしだなと思ったが、第1楽章の中盤からは激しさを増す。

ピアノとヴァイオリンの掛け合いがこちらの気持ちも前へ前へ急かしていく。しかし、合わせるところはしっかりと合わせて落ち着かせる。

第2楽章は初めに奏でるテーマを変奏しながら展開していく。陽気なものから低く重いものまで幅がある。

第3楽章は、疾走感あるタランテラ風。フィナーレに相応しいデュエットであった。

 

アンコールには、ルドルフ・フリムル《ベルスーズ》が用意されていた。

美しく優しいメロディーで心地良かったが、夢のような2時間はあっという間に終わり、というような寂しさも感じた。

 

寒い中、店も閉まっているので外でブログを書いてリサイタルの余韻に浸っていたとさ。