ピアノ一筋の僕はどんな本を読めばいい?

文学経験値0の大学生が空っぽの本棚を埋めていく

藤田真央リサイタル

東京オペラシティ。ロマン派を欲していた私にとって良い感じのプログラムだったので、初めて藤田真央を聴きに行きました。

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あれは天賦の才であり、そして何よりも楽しんで演奏しているのだなと今日改めて感じました。

 

はじまりのショパンはホールの空気を本当に変えてしまった。

触れたら壊れてしまうくらい繊細な旋律と、包み込むような低音。

周りの人がすっかり居なくなってしまって、厚い黒の空間の中、藤田真央と一人で対峙しているように感じました。

 

バラード3番も私がいつも聴くような中間部の激しさは用意されておらず、幾分物足りなさを思いましたが、ショパンにある「輝かしさの中の儚さ」のようなものが現れていました。

 

それに対比してか、リストのバラード2番は轟々とうねる低音・天上の世界を想起させる煌びやかな高音と、ダイナミックな演奏でした。

 

ブラームスも優しい響きで演奏していましたが、私はブラームスが大嫌いなのであまり心に残りませんでした。

 

作曲家としてのクララ・シューマンは全く知らない一面でした。

夫ロベルトが精神病院に入った後作られたという『3つのロマンス 』Op.21の第1番。

抱えきれないほどの嘆き、悲しみ、苦しみが込められているような1曲でした。

 

クララからロベルトへ、またそのピアノソナタ第2番もノンストップで駆け抜けていきます。

 

軽やかさとダイナミックさ、移りゆく明暗が、技巧的にならずに自然と展開されていく。

藤田真央は天才、一生届かない存在だなと最早清々とするような最高のパフォーマンスでした。

 

アンコールはラフマニノフ『幻想小曲集』Op.3

そして+αにモシュコフスキーのエチュード

もはやロマン派プログラムの第3部。

 

彼は奇を衒うことをしない、ただピアノが大好きな少年なんだなと、さらさらと弾く姿を見て思わず微笑んだ。

ブログ開設1年、わかったこと

2020/11/23にブログを開設して、あっという間の1年。

相変わらず訪問者は少ないですが、人に見られるというのは副次的なものと考えているからあまり気にしていません。

 

本を読んで備忘録代わりに、とブログを始めたものの、内容をまとめるという行為が意外と大変。

 

読んでから1ヶ月後にようやく納得いく文章をアップできるということがほとんど。

 

その間に何冊も本を追加で読めたんじゃないか?とも思いますが、文章力向上のためということで目をつぶりましょう…

 

また、ブログをはじめた途端、大学が徐々に再開され暇潰しをする暇もなくなったというのも事実…

でも、これからも読書習慣のために少しずつ書いておきたい。

 

のんびりながらもブログをしてわかったこと

 

  1. 毎日、毎週更新している人のすごさ
  2. 本の要約、考察はとても大変
  3. 無名ブロガーは雑談・日記以外で自分語りするな(今もそう)
  4. 本よりも映画の方がに摂取できる

 

1. 本当に毎日更新している人もいるし、毎週更新している人なら山のようにいると思いますが、すごすぎる。

些細な日常も、切り抜いて面白く記事にできるのは1つの才能ですね。

 

 

2. については上にも書きましたが、ネタとして取り上げた本をまだ読んだことのない人にも、出来るかぎり伝わるように書くというのが難しいです。

私のブログは、片手に題材の本を持ちながら記事を読まないとなかなか理解できない、と書いている自分でも思います。

 

さらに内容を踏まえたうえで考察…

読むのに精一杯というところから早く脱却したいものです。

 

 

3. に関しては、自分の記事を読み返すとしばしば思うことです。

ブログのイントロを自分語りから始めると、必要のない情報が目に飛びこんでくるのでブラウザバックしてしまいそう。

 

本の内容に関連して尚且つ、身近な事象をはじめに提示することで読みやすい文章になるというのが発見ですね。

 

うまい具合にイントロを書けたと思うのは、遠藤周作『沈黙』についてのブログかなぁと思っています。中身は要改善の箇所もあります。

pianoman0315.hatenablog.jp

 

 

4. について思うことは以前書きました。

pianoman0315.hatenablog.jp

 

この1年間で読んだ本

私は色々なジャンルを読んでいこうと思っているのですが、何から読めばいいかもわからない状況です。

今は専門である音楽を中心に、面白そうと感じた作品・作者で読むようにしています。

 

この1年間 (2020/11〜2021/11) で読んだ冊数は、23冊でした。

当初、「1ヶ月1冊くらいのペースだったら上出来」と思っていましたから倍近く読めています。

純文学やSF、為になる教材も読んだのでジャンルの幅もまずまずでしょうか。

 

しかし、文章化できたのはわずか…

 

読了しても内容をきちんと吟味できていなければ意味がありませんので、これからはより早く理解・考察をすることが目標ですね。

 

小説、評論、学習本・教材、という括りで分類しています。(太字は過去のブログへ)

小説(作者五十音順)

伊坂幸太郎

遠藤周作

坂口安吾

筒井康隆

三島由紀夫

森雅裕

評論

小林秀雄

学習本・教材

 

 

さて、2021年も残りわずかとなってしまいました。

残り1か月も本を読むように励みつつ、大学の課題を片付けなければ。

 

来年はこのような「自分語り」は、ほどほどにしたいと思います…

ノーマン・デマス『フランス・ピアノ音楽史』を解読する

 

大学図書館での出会い

大学の図書館っていいですよね。

2万円くらいする本とか絶版になった本が無料で借りられるので。

 

音楽の書籍って売れないから単価が高いんですよね。そして、本当にあまりにも売れなかった場合、絶版になってしまうという…

大学は、売れていようが売れていまいが質の高い書籍を納品してくれているので、パラパラ見ているだけでとても楽しい。

 

さて、音楽の棚に眠る「お宝」を発掘しに、ちょくちょく足を運んでいるのですが、今回掘り出したのが、

ノーマン・デマス著、徳永隆男訳『フランス・ピアノ音楽史(音楽之友社、1964年出版)

 

半世紀以上も前に出版され、絶版となった本ですが、とても面白いものでした。

 

副題に“クープランからメシアンまで”とありますが、実際のところデュティユーブーレーズまで網羅しており、

現代までの(フランス)クラシック音楽史と乖離はあまりない印象です。

 

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巻頭、フランスの代表的な作曲家たち

 

フランスの作曲家たちがピアノ音楽を多様化、そして洗練してきた一方、名前を挙げられるのは決まって フランク・フォーレドビュッシーラヴェルプーランクらである。

 と序文で語られており、この本を通して、あまり知られていないフランスの重要な作曲家を取り上げてくれます。

また、誤って広まってしまっているフランス音楽の演奏法に苦言を呈し、正しい解釈についても書かれています。

 

演奏の解釈について

序文を経ると、まず「緒論 解釈について」という項目がわざわざ置かれていることからも、このところ流布している演奏法・解釈に筆者がどれほど憂いていることかがわかります。

作者が書いたテンポや強弱の変化(アゴーギクデュナーミク)に対して、演奏者が度を越して表現することに問題を提起しているのです。

・・・演奏家の仕事は、作曲家の意図を解き明かすことであって、作曲家が意図すると自分が思うもの、いい換えれば、その音楽が意味すると自分自身が思うものについて、私的解釈を述べることではないからである。(p.9)

 

これはフランス音楽、さらにはピアノ音楽だけにとどまらず、あらゆるクラシック音楽を演奏するうえで大前提とも言えることでしょう。

「拍子」という要素、「楽式」という要素、「和声」という要素・・・様々な要素が絡み合って、はじめて旋律を歌うことができるのです。これらの要素にはマナーがあるので、当然演奏者に対して制約を加えてくるのです。

極端な自身の解釈を入れてしまえば、西洋音楽ではなく演歌になってしまう可能性だってあります。

 

ショパンの「バラード第1番」やフランク「交響曲ニ短調」を例にとり、過度にルバートをかけることや、Allegrettoと指示された速度を勝手な解釈でAdagioのような速度に変えることは、結果として作品の印象や魅力を損ねてしまうということを伝えてくれます。

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ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル

先日、第18回ショパン国際ピアノコンクールが話題となっていましたね。

日本勢は反田恭平さん、小林愛実さんが入賞。二人とも以前に増してピアノの表現力が豊かになっていて、コロナ禍での大会延期を上手に活用したのだなと感じました。

 

しかし、1位に輝いたブルース・シャオユー・リウさんは格別でした。

音の粒が細やかで尚且つ揃っていて、軽やかで繊細というのが第一印象。

特にポロネーズやなどの舞曲は軽快で、煌びやかで、聴きやすい。

そして、紡がれる音楽には喜怒哀楽の表情(怒りはそこまでないけれど)が淡いうつろいの中で見え隠れして、まさにショパンを弾くに相応しい技術表現力でした。

生で一度聴きたいところですが、11月の来日コンサートのチケットは取れませんでした…

 

ブルース・リウの話をしようとすればいくらでも書けそうですが、今回は同じくショパン国際ピアノコンクールの覇者である、ラファウ・ブレハッチのリサイタルについて書いていきたいと思います。

ラファウ・ブレハッチ ピアノ・リサイタル | クラシック音楽事務所ジャパン・アーツクラシック音楽事務所ジャパン・アーツ

 

ラファウ・ブレハッチは2005年のショパンコンクール優勝者で、マズルカ賞・ポロネーズ賞・コンチェルト賞・ソナタ賞も総なめにしたポーランド人ピアニストです。

ショパン以外にもドビュッシーやバッハ、シマノフスキなどをCDに出しています。

 

今回は、バッハ・ベートーヴェン・フランク・ショパンを取り上げたプログラムでした。ドイツのバロック・古典派、フランスのロマン派といったところでしょうか。

リサイタル全体の感想としては、やはりブルース・リウと同じく繊細な音作りがなされていて、聴いていて心地が良かったです。

激しさや鋭さは控えめでサロンのような空間になるので、次回ブレハッチの演奏を聴くならもう少し前の席を取ろうかなとも感じました。

 

実は、東京オペラシティ(10/28公演)に赴くのは初めてで、タケミツメモリアルというホールは横幅はコンパクトながらも、天井がピラミッドのように段をつけながら高く伸びており驚きました。

サントリーホールはよく行くのですが、あのゴージャスさとはまた違う上品さを感じました。

 

 

大きな拍手で迎えられて登場。椅子に座って演奏を始める前に、ラファウ・ブレハッチが英語?でお客さんに少し話をしていました。

みんなキョトンとしながらも再度拍手。

後でアナウンスがありましたが、緊急でヨーロッパから電話があり開演時間が遅れて申し訳ないというようなことでした。

 

そんなちょっとくらい構いませんよマエストロ!!

 

 

バッハ「パルティータ第2番」:あまり私は聴かない曲ですが、凛とした入り、澄んだ空間への一筆書きのように息の長い旋律、じっくり聴いてみると悪くない音楽だなと思い直しました。

でももう少し歯切れの良い音楽の方が私の好みには合うかもしれない。

予習と思ってアンドラーシュ・シフの音源を聴いていたのがだめだったかな。

 

ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第5番」:激しい上昇音型の主題からはじまるソナタです。激しさと穏やかさを対比がはっきり表現されていて、激しさというのも耳が痛くなるようなものではなく、透き通った高音が印象に残っています。

第2楽章 Adagio molto のような優しい響きは、特にうっとりさせられました。

 

ベートーヴェン「創作主題による32の変奏曲」:まったく聴いたことがなかったので、どのように変奏されていくのかという構成面が詳しくわからないのですが、あれだけよく指が動くなあと思いながら聴いていました。

やはりこの曲でも、高音がホール中へ澄み渡っていくあの感覚は、半日が経っても何度も噛みしめて味わっています。

 

フランク「前奏曲、フーガと変奏曲」:私はこの曲が大好きでして、ラファウ・ブレハッチの手で弾かれるこの曲を聴くためにチケットを買ったようなものです。

ロマンティックでありながらも神聖な響きのあるこの曲は、やはりブレハッチの演奏に極めてマッチしており、感動しました。

いつかフランクピアノ曲集を録音して頂きたいなあ。

 

ショパン「ピアノ・ソナタ第3番」:ここまでは1曲が終わるごとに退場して少し間があったのですが、フランクとショパンでは間をあまり置かずに弾き始めました。ここから今回のクライマックスに差し掛かったようで面白く思いました。

さすがはショパン弾き。安定した演奏でありながらも様々な表情を見せてくれます。

激しさ、輝き、哀愁、第2楽章や第4楽章の見えを切るような終え方も好きですね。

 

喝采でリサイタルが終了。

 

ショパン「ワルツ第7番 Op.64-2」:アンコール。軽やかでいて、そのルバートの絶妙さは素晴らしいものでした。

 

鳴りやまない拍手に何度も深々とお辞儀して、良い人柄も素晴らしい音楽につながっているのだろうと感じます。

市田儀一郎『バッハ 平均律クラヴィーアⅠ: 解釈と演奏法』を紹介する

もう世間はクールビズを終えネクタイを締めはじめ、秋が一層深くなってきました。

芸術の秋。

芸術といえばもちろん、バッハですよね??

 

バッハと真正面から向き合いたいなら、これを読んで頭をフル回転させていきましょう!

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市田儀一郎は日本のバッハ研究の権威と称された、戦後日本の音楽学者です。

今回紹介する「平均律クラヴィーア」も長年読み継がれている重要な書籍です。

 

残念ながら2014年に亡くなられたのですが、「平均律クラヴィーア」は晩年まで改訂を施すなど、精力的に研究を続けていたことが見受けられます。

氏の残して下さった功績は、我々のような素人学習者には貴重でありがたいものです。

 

まえがき

さっそく読んでいこうとする前に、こんなことが書かれていました。

大バッハの遺した平均律クラヴィーア曲集ピアノ音楽の旧約聖書にもたとえられるほど偉大な芸術作品であり、同時に授業用教材としても汲めども尽きない宝庫であって、その教育的価値はすこぶる大きい。

・・・しかしその価値やありがたみをよく知らないで尊敬しているだけでは、尊敬ではなく敬遠である

 

バッハの音楽は難しい、フーガは苦手という声はよく耳にしますし、私もすごく苦手です。

市田氏はそれを、バッハの楽曲構成面を正確に認識できていないことが原因と言います。

 

バッハがよくわかる

本書の良いところは、各楽曲を丁寧に、詳しく書かれているのはもちろん、

  1. フーガの図解付き
  2. 平均律クラヴィーア曲集成り立ち
  3. プレリュードの特徴、フーガの構成
  4. 楽器、テンポ、装飾法

など、疑問のタネになりがちな演奏法まで余すことなく解説してくれています!

 

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ぜひ、バッハ・平均律クラヴィーア曲集のお供にどうぞ。